UX勉強会を通じて学生なりに考えた、「UX設計の楽しさ」
この記事の目次
- UXとは、なんでしょう?
- 良いUXを考える手法など
- まとめ:学生なりに考えた、「UX設計の楽しさ」
こんにちは、インテリジェントネットスタッフの吉川です。
今回は、2月に社内で開催された、「UX勉強会」の実施レポートです。
普段のインタビュー記事とは異なった形式ですが、これもまた学び。
インテリでは大小いろいろな勉強会が開催されていますが、今回は少し大きめのようです。
今日の講師役は、以前ディレクターとしてインタビューに答えてくださった徳永さんでした。
前提
この勉強会を開催するにあたって、徳永さんが前提としたことは以下の3点。
- 話を聞いたからと言って、すぐに超ステキUX設計ができるようになるわけではない。
- でも、聞かないよりは聞いたほうがステキ設計はできるようになるかもしれない。
- 少なくとも、UX設計のタイミングで「どういう判断基準で考えればいいか」はわかるようになると思います。
とのことでした。確かに、インプットとアウトプットできることはまた別の話ですしね。
プロデューサーにとっては提案の切り口、ディレクターにとってはサイト設計やコンテンツ設計、デザイナーにとってはよりユーザーを想定したUIデザインのためにプラスになるはず、とお話されていましたし、僕もその通りだと思い、参加させていただきました。
UXとは、なんでしょう?
まずはこの会のタイトルにもなっている「UX」とは何かについて確認。
UX=「User Experience」であり、日本語に訳すなら、「ユーザー体験」ですね。
1:UXは「おもてなし」ではない。
「体験をする」=UXの主語はあくまで「ユーザー」であり、作り手ではないから、おもてなし(これは作り手がすること)ではないというのが、その理由です。
つまり、このことから、UXとは、
- ユーザーの「主観」である。
- それが良い体験だったかどうかを決めるのはその人の感情とか感情である。
- 人によって違うし、世間的に基準があるわけではない。
ということがわかりました。
2:UIはUXとは違う。
確かに、Webサイトの場合、ユーザーが体験するものが画面にあるそのものだから、UXを考える=UIデザインだと思いがちですが、それは少し違うとのこと。
例えば電子レンジで考えてみます。
電子レンジの右側にある、加熱時間や強弱を変更する部分を想像してください。
その右側のメニューに(料理メニューを選択すれば、自動で加熱設定を行ってくれるような)いろいろなボタンがあるほうがいいか。ない方がいいか。
こんな電子レンジもあれば・・・
こんなものもあります。どちらを好むかは、人によって違いますよね。
例えば、料理が大好きな丸の内のOLさんであれば前者を、細かい機能を必要と思わない1人暮らしの男性ならば後者を好むかもしれない、といったように。
UIは非常に重要な要素ではあるが、あくまでUXを構成する1要素でしかなく、それだけで解決しない問題はたくさんあるということなんですね。
3:ユーザビリティ?ユーザーエクスペリエンス?
「ユーザビリティ」・・・こちらも似ている言葉ですが、定義に明確な違いがあります。
ユーザビリティ:【ユーザーの目的を達成する過程】における使いやすさ。ストレスを感じないこと。
ユーザーエクスペリエンス:【目的を達成し終えるところまで】における体験。
魚をレンジで温める時を例に考えてみます。
「"あたため"を押す」までのわかりやすさや効率がユーザビリティ、ユーザーエクスペリンティは全てを含んだ体験というわけです。
もうひとつ、UXとユーザビリティの違い、そして殊更に、UXの重要性を勉強する上で、非常に印象的だった例が挙がりました。
それは、ある大手旅館のWebサイトの話でした。
ある旅館の公式Webサイトのトップページには、一般的な宿泊施設サイトによくある「空き部屋検索」「予約カレンダー」にあたるものがありませんでした。(もちろん、ナビゲーションから空き部屋予約ページに飛び、予約をすることはできます。)
一見、これはユーザーにとって予約までに1ステップ多い過程を踏ませなければならないので、良いユーザービリティを実現していないとみなされるのかもしれません。
しかし、この予約画面をあえてトップに出さないのも、それ以上に体験してほしいものがあったからなのです。その体験してほしいもの、というのは、その旅館の「世界観」「行動指針」でした。
その旅館のことを知っている人にも、初めて訪れる人にも、
今一度伝えたい思いがある。
それをトップページにしっかりと載せることによって、彼らは自分たちの旅館のアイデンティティを確立しているのです。
そのような工夫ひとつひとつが身を結び、常連客が増えるというケースも、少なくないのではないでしょうか。
後にも述べますが、Webを通じて「世界観を伝えること」や「ブランディング」は、
情報自体がどこでも簡単に入手できるこの時代において制作側が意識して取り組むべき課題なのではないかと思いました。
ユーザービリティというのは、ユーザーが目的を達成する過程のわかりやすさや効率なので、
「究極のユーザビリティとは、UIの存在を無にすること。」と言われることもあるそうです。
AppleのスマートフォンiPhoneがリリースされた当初を例に考えてみました。
iPhoneが出たばかりの頃は、多くの人が珍しがって、
あのヌルヌルした感じのUIに目をキラキラさせていましたが、今(あのUIが好みという人はいても)そのUIだけを取り上げて「楽しい!」なんて人はほとんどいないと思います。
UIは目的を達成するための接続面、通り道でしかなくて、本来ユーザーが達成したい目的はその向こうにあります。
UIがどうかというのは、あまりユーザーにとって関係なく、むしろ目的達成のためのステップ=手間とも言えるわけです。
つまり、究極のユーザビリティというのは、(目的達成するための通過点に過ぎないのだから)UIの存在を感じさせないことなのです。
それに対して、UXは過程も含めた全部、なので、ここでもUXとUIの違いを認識することができます。
良いUXを考える手法など
4:UXとUXD
繰り返しになりますが、UX単体には良いも悪いもないです。
しかし、想定ユーザーにとって良いUXを考えること=UXD(デザイン)に良し悪しは存在します。
いかにユーザーに主観として満足してもらえるかを考えるわけですが、その手法として以下の3つの方法を勉強しました。
ここでは概要をざっくりと載せて、最後に勉強会を通じて僕が感じた「UX設計の面白さ」について書いてみようと思います。
○UXD手法
- ペルソナ/シナリオ法
名前、プロフィール、写真、サイトのユーザーゴール、アクティビティシナリオを以下のように作成し、「仮想のユーザー像」をつくり上げる手法です。
確かに非実在ですが、いるだろうと考えられるもの(架空ではない)を想定します。
<メリット>
- メンバー間の合意が得られる。
「20代後半の女性」を複数の人間で議論してしまうと、正解が1通りではないからどんどん出てきてしまう。
ペルソナがあれば、全員が同じユーザーを描いて議論ができる。合意形成がスムーズに。
- イノベーションとかアイデア発想のためになる。
「主婦が喜ぶ洗濯機の新機能を考えてください」だけだと思い浮かばないことも、
5W1Hが具体的になったアクティビティシナリオがあれば、アイデアが出しやすい。
- 注意
定量的なデータと定性的なデータを調査しておく必要がある。
大量の顧客データ、アンケート、ヒアリング結果を事実として分析することが必要。
個人や組織の感覚で、想像上のペルソナを作ってしまうのはかなり危険である。
- メンバー間の合意が得られる。
- カスタマージャーニーマップ
AISCEAS的なもの、利用シーン、デバイス・チャネル、それぞれのユーザーの行動フローが含まれたもの。サービスを知っているヘビーユーザーとして訪れるのか、電車内で広告を見つけて探索して訪れるのかなどをメンバー間で合意形成する。
- UXフロー
具体的なサイト設計をするためのもので、サイトにどのようなコンテンツが必要なのかを洗い出す。確かに作成側の想定通りの順番でユーザーが進むことはない。
しかし、フローを作成する目的は、各サイトページを訪問する順序ではない。
必要であると想定されるコンテンツを全て、漏れなくダブりなく洗い出す作業に意味がある。
まとめ:学生なりに考えた、「UX設計の楽しさ」
UXD手法について具体的に話していただいた徳永さんは、
良いUXを考えるコツとして、以下のことを挙げていました。
- いつだって、UXを意識していないとうまくならない
- 脳内でUX手法をやってみる
- できればビジネス視点でも考える
UXをどんなに素敵なものにしたくても、実現できなければ意味がありません。
また、逆に、ユーザーのためだからといっても、投資回収ができないほどの体験を与えてしまう。
きちんとした運用ができるところまで考えるのが、良いUXDだと学びました。
また、UXを通じて「世界観を伝えること」や「ブランディング」は、
情報自体がどこでも簡単に入手できるこの時代において制作側が意識して取り組むべき課題だと思いました。
このようにまとめると、UXDは非常に難易度が高く大変だというイメージがありますが、
その分そこには「クリエイティブな楽しさ」が詰まっています。
単純作業で量産すれば解決する、という問題ではなく、
緻密な分析や個性を活かした大胆な切り口で設計するWebサイトが、ユーザーに認めてもらえる時代です。
自分の心を動かすUXDがあれば、その理由を自問自答してみる。
いろんな人に会い、対話し、彼らの心を動かす本質的な解決策を練る。
Web制作者がこだわりとやりがいをもってモノを作れる時代、自分は悪くないんじゃないかと思います。
このレポートを書いてアウトプットするだけでも、UXとUIの違いや、UXDの手法に関する知識が整理されました。
「デザインとアートの違いは、その目的意識にある」といった話をよく聞きますが、
ターゲットユーザーにとって良いUXを与えることを意図したデザインには、
そのユーザー自体のこともよく知るのはもちろん、その時代の設計トレンドなども勉強しておく必要があるな、なんて考えたりもしました。
以上、社内UX勉強会レポートでした!